Iyo's Story
骨董市
Capter1
「こんちは~」
お好み処ののれんが上がる。
「ぃらっしゃぁい!!」
いつものように沙絵の声が店中に響き渡る。
「あれぇ!貴御公!!マグロ持ってきてくれたぁ?」
「ぉう!今日は飛び切り新鮮なマグロだぜぃ!!!!!」
貴御公・・・とは俺のあだ名。
本名は樹下貴御昌。
「ねぇ、貴御公今日って何年何月?!」
いつものように沙絵が俺に日付を聞いてくる。
「3006年11月30日だよ。」
「はぁ~ん。もう11月かぁ。」
「沙絵ちゃぁ~~~ん!ビール追加ぁ~~~!!!!!」
これもいつも通り。
ここは:お好み処:といって、毎日武やらお偉いさん達がたくさん来る。
そこの一人娘の沙絵は忙しいのだ。
「貴御公何か飲んでく?」
「ぃや。。。今日は親父の手伝いがあっから。」
「そ~!」
「ただいまー・・・・・・」
「親父?」
いつもみたいに親父の「お~!沙絵ちゃんは元気だったか~!」というはちゃけた声が聞こえない。
「いないんかぁ~?」
何度呼びかけても応答なし。
_____ぴちゃ・・・・・・
「ん?」
暗くてよく見えないがそれは血だった。
「親父?」
・・・・・・・・沈黙。
「親父ぃ!!!!!!!!!!!!!!」
親父が血を流して倒れていた。
その横には手紙がおいてあった。
「貴御昌よ、お前は沙絵と仲が良さそうなので:上:の感に触った。今すぐ処刑台へ来い。」
・・・上・・・・・・上様か!!!
Capter 2
今すぐ・・・・・・処刑台に・・・!?
「ふざけるなぁ!!!!!!」
貴御昌は叫んだ。
喉がつぶれるくらいな大声で。
___そして駆け出していった。
「沙絵ちゃぁ~~~ん!!」
大声を出して叫びながら走っている一人の男。
「あれぇ?弥白邊(やじろべ)?どうしたの?」
「たっ・・・・・・たいへんだぁ!!おやっさんが殺されたって・・・!!」
沙絵はその事を聞いて一瞬動きが止まった。
「・・・・・・え?冗談止めてよ・・・弥白邊・・・?」
「冗談なんかじゃないんだよ!!」
だって・・・昨日まであんなに元気で・・・・・・
ダッ!!
沙絵は駆けていった。
何件くらい家の前を走っただろう。
いつもは覚えているのにそのときだけは走るので精一杯だった。
__そのくらい必死だった。
「貴御公ぅ!!!」
家は静まりかえっていた。
その時、誰かが倒れているのが目に入った。
「・・・・・・おじ・・・おじさん?」
それは確かにおじさんの姿。
沙絵の目から涙が溢れた。
その時、一通の手紙を見つけた。
さっき貴御昌が読んでいたものだった。
「・・・・・・え?」
沙絵はまた急いで駆けていった。
さっきよりも早く、立ち止まらずに。
貴御公!と何回も叫びながら必死で走った。
俺は死ぬのか。
貴御昌はそう思いながら処刑台の上に立った。
周りには多くの人が集まってきた。
貴御昌はふと沙絵のことを思い出した。
「あいつ・・・・・大丈夫かな・・・」
その時思った。
上様は沙絵に惚れている事に。
自分がいなくなったら沙絵は連れて行かれてしまうのではないか。
沙絵はそんなことは望んではいないはずだ。
俺だってそんなのは嫌だ。
そう思った。
殺そう、そして俺も死のう。
沙絵が来ないうちに。
貴御昌は腰に下げている刀を抜いた。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!!!!」
__一瞬沈黙がはしった。
上様は血を流して倒れていた。
やってしまったのだ。
もう後戻りはできない。
貴御昌が切腹をしようとした時・・・
「貴御公!!」
愛しい者の声が聞こえた。
沙絵だ。
「貴御公・・・死んじゃ嫌だよ・・・!!」
自分も死にたくはない。
だが自分はとんでもない罪を犯してしまったのだ。
後戻りができるはけがない。 そんなことは許されない。
「私を・・・独りにしないでよぉ!!!」
生きたい。
沙絵と共に・・・・・・ずっと・・・・・・・・・・
生きて償ってはいけないのか・・・
そうしよう。
「あぁ・・・死なねぇよ・・・・・・お前を残してなん・・・・・・」
___ザシュ
沈黙が走った。
貴御昌が倒れた。
沙絵は頭が真っ白になった・・・
「貴御公ぉーーー!!!!!!」
貴御昌は死んだ。
・・・・・・いや・・・上様の家臣に殺された。
もう帰ってこない。
貴御昌も、彼と一緒に過ごした時間も何もかも。
何も元通りにはならない。
沙絵は泣き続けた。
ずっとずっと貴御昌が死んだ場所で。
その時、声が聞こえた。
それは貴御昌の声だった。
___泣くなよ。泣くなんてお前らしくない。
お前は強いんだから俺がいなくても大丈夫だ。
俺の分まで生きてくれ。
その言葉を聞いて沙絵は涙を拭いた。
「勝手なんだから・・・!」
沙絵は歩くと、歩き続けると誓った。
自分に。
そして・・・・・・
___貴御昌に。